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「事業で生じた収益の一部を会社以外で役立てたい」。そのような場合には、社会貢献を行っている団体に寄付をするという方法があります。寄付をすれば、社会貢献ができる上に、寄付をした分の金額を損金算入という形で差し引く(控除する)こともできるので、結果的に節税にもつながります。今回は、法人が行える寄付金の種類や、損金算入できる金額の計算方法についてお伝えします。

寄付金の種類について

法人が行う寄付金には、大きく分けて以下の4種類があります。それぞれの内容について確認しましょう。

1.国や地方公共団体に対して行う寄付金

国や都道府県、市区町村に直接寄付をするものです。狭義の寄付金だけでなく、国や地方公共団体に寄せられた災害時の義援金もこれに含みます。日本赤十字社への義援金や新聞やテレビ局などを通じて行われる義援金も、こちらに該当します。

2.特定寄付金(指定給付金)

特定寄付金(指定寄付金)とは、公益社団法人・公益財団法人が社会に対し広く募集する寄付金で、公益性・緊急性が特に高いものを指し、財務大臣が期間や募金総額を指定するものを言います。たとえば、日本赤十字社への寄付金で財務大臣に認められたものや、赤い羽根共同募金がこれに該当します。

3.特定公益増進法人等に対する寄付金

教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与するものと認められた特定公益増進法人に対する寄付金のことです。特定公益増進法人には、日本赤十字社や認定NPO法人などが2019年10月時点で1,118法人も存在します。

4.一般の寄付金(1~3以外)

上記1~3以外は、「一般の寄付金」となります。「一般の寄付金」について、政治団体や宗教法人などへの寄付がこれに該当します。

寄付金の損金算入額の計算方法

法人の寄付金は、会計処理上損金算入することで、収入から寄付した金額を控除することができます。国や地方公共団体に対して行う寄付金と、指定寄付金は全額経費として控除可能です。その他の2つの寄付金はどのように計算するのでしょうか。

特定公益増進法人等に対する寄付金

特定公益増進法人等に対する寄付金は、次のうちいずれか少ないほうの額を損金算入します。

①特定公益増進法人に対する寄付金の合計額
②[資本金等の額 × 当期の月数 / 12 × 3.75 / 1000 + 所得の金額 × 6.25] × 1/2

なお、寄付金額が②の金額を上回った場合は、上回った部分を次の「一般の寄付金」に含めることができます。

一般の寄付金

国や地方公共団体に対する寄付金、特定公益増進法人等に対する寄付金のいずれにも該当しないものは、「一般の寄付金」として以下の計算式で算出した金額を損金算入します。

〔資本金等の額 × 当期の月数 / 12 × 2.5/1000 +所得の金額×2.5/100〕× 1/4
※所得の金額は、支出した寄付金の額を損金に算入しないものとして計算します。

企業版のふるさと納税で控除が可能

ふるさと納税寄附金受領証明の封筒の写真

個人と同じように、企業もふるさと納税を行うことができます。ふるさと納税を利用すれば寄付した金額を収益から控除することができるので、法人でもおすすめできる寄付方法です。しかし、そもそも企業版のふるさと納税とはどのようなものなのでしょうか。

企業版のふるさと納税とは?

企業版のふるさと納税とは、平成28年度税制改正で新設された制度で、国が指定する地方創生プロジェクトに対して寄付をした場合に、寄付額の3割に相当する金額について税額控除が受けられるものになります。別名「地方創生応援税制」とも呼ばれます。

具体的には、以下の金額の控除が受けられます。

法人住民税:寄付額の2割(法人住民税法人税割額の20%が上限)
法人事業税:寄付額の1割(法人事業税額の20%(地方法人特別税廃止後は15%)が上限)
※2020年の税制改正で、法人住民税については寄付額の4割、法人事業税については寄付額の2割に拡充される予定です

なお、法人住民税の上限を超えた部分は、法人税から控除することになります。

以上のように企業版ふるさと納税を利用すれば、税負担が3割軽減されます。その上、地方公共団体への寄付として寄付額の3割を全額損金算入できるので、支払うべき法人税が計6割も減ることにつながるのです。

企業版ふるさと納税の注意点

税負担軽減の面で非常にメリットの多い企業版ふるさと納税ですが、いくつか注意点がありますので、覚えておきましょう。

まず、企業版ふるさと納税には納税金額の下限が設けられており、最低10万円以上寄付を行うことが必要です。また、個人版のふるさと納税の場合は、自己負担の金額は2,000円になりますが、企業版ふるさと納税の場合は、自己負担金額は寄付金額の4割となります。仮に10万円寄付する場合、4万円は自己負担分となるのです。

寄付したプロジェクトにかかわっている企業への利益供与は禁止されていることもありますので、税額控除が見込めると言っても、費用対効果はよく検討したほうがよいでしょう。

控除も活用して積極的に寄付をしましょう

同じ金額のお金を支出するのであれば、少しでも社会の役に立つ使い方をしたいものです。その方法の一つとして、寄付をするという選択肢があります。国や地方公共団体、慈善事業を行う団体などに寄付をすれば、社会貢献をしている企業としてアピールできる上に、税額控除を受けることも可能になります。重きを置くべき箇所は社会貢献ですが、企業の場合は控除を意識しながら、寄付を積極的に行ってみてはいかがでしょうか。