TAXの文字の上に右肩上がりの矢印と千円札と小銭の写真

義援金での寄付や公益法人などへの寄付は、最近はオンライン決済やクレジットカード払いでもできるようになり、 非常に身近なものとなっています。一方で、寄付が税制上控除の対象であることを知っている人はあまり多くないことでしょう。しかし、2011年におこなわれた税制改正で、寄付は納税者にとって大きなメリットをもたらすものへと変化しました。
そこで寄付金控除への理解を深めるため、制度の仕組みやふるさと納税との違いについてまとめました。

そもそも納税における控除とは?

「控除」=「税金が返ってくる」といったイメージがあるものの、実はよくわからないという方のために、控除の概要と身近な控除例について解説します。

控除の概要

「控除」とは「金額・数値を差し引きすること」です。そして納税における控除とは、納税者それぞれの事情に応じて税負担を公平にするために生まれた制度です。控除にはいくつか種類がありますが、大きく分けると「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。

所得控除は、所得合計から要件に当てはまる控除の合計額を差し引くものです。ここで算出される額が課税所得となるので、控除額が大きければ支払税額が小さくなります。一方で税額控除は、所得税から控除金額をすべて差し引くものです。
所得税が給与から天引きされている会社員の場合、控除の適応で税金の過払いがあると年末調整で税金が還付されます。自営業者などの場合は、還付はありませんが支払うべき税額が少なくなります。

意外と身近な控除対象例

控除の対象となるものの中には身近なものが多くあります。給与所得者の給与から控除される給与所得控除、扶養家族を持つ方に適用される扶養控除などのほか、いわゆる住宅ローン減税も控除の一種です。

寄付金控除とはどのような控除?

では、ここからは寄付金控除について説明していきましょう。

寄付金控除の概要

寄付金控除は、寄付金を支払った場合に受けられる控除のことです。ただし寄付の対象は、定められた要件に当てはまる団体に限られます。寄付金控除が制定された当初、寄付金控除は所得控除に限られていました。しかし、所得控除では一般的に控除額が少額にとどまり、納税者にメリットが少ないことが指摘されていました。そこで2011年におこなわれた税制改正では、政治団体や認定NPO法人、公益社団法人などに対する寄付金のうち、一定のものについては「所得控除」と「税額控除」のいずれを適用するか納税者が選べるようになりました。

「税額控除」と「所得控除」を選択できるメリット

一般的な世帯で寄付をおこなった場合、税額控除の方が控除額が大きくなることが多いです。一方で、高額所得者が高額寄付をおこなった場合、所得控除の方が控除額が大きくなることがあります。
2011年の税制改正で納税者が「所得控除」と「税額控除」を選択できるようにしたのは、少額の寄付をしやすくする一方で、多額の寄付をする高額所得者のメリットを維持し、より一層の寄付を促す目的があったといえます。

ふるさと納税と寄付金の控除の違いとは

ふるさと納税返礼品と書かれた小包とクエスチョンマークの写真

次は、ふるさと納税と寄付金の控除の違いについてです。

ふるさと納税の概要

ふるさと納税は、平成21年度(2009年度)に創設された制度です。「納税」とはいうものの、実態は地方自治体への寄付です。寄付をおこなうと返礼品が贈られ、さらに自己負担額が2,000円を超えている場合は税金の還付や控除を受けることができます。

ふるさと納税と寄付金の控除の違い

通常の寄付をおこなった場合、控除されるのは寄付金額の一部にとどまります。しかし、ふるさと納税では住民税に特例控除額が設けられ、実質2,000円で寄付がおこなえるようになっています。
実際に、年収500万円、夫婦共働きで小学生の子ども2人の家庭が5万円の寄付をおこなった場合を例に、通常の寄付とふるさと納税の控除額を比べてみます。まず、寄付金控除額は「年間寄付総額-2,000円」で算出されるので、「5万円-2,000円=4.8万円」が寄付金控除額となります。

給与所得者の場合、これに「給与所得控除」・「基礎控除」・「扶養控除」を加えたもの(今回の場合は268万円)が所得控除額となるので、課税対象となる所得は「500万円-(268万円+4.8万円)=227.2万円」となります。
課税所得が227.2万円の場合、所得税率は10%なので、通常の寄付の場合「(寄付金額-2,000円)×10%=4,800円」が控除額となります。
しかし、ふるさと納税の場合では実質的な負担が2,000円となるように住民税が控除されるので、最終的に「5万円-2,000円=4.8万円」、つまり通常の寄付の10倍にあたる金額が控除されることになります。

寄付金控除を活用して賢く寄付しましょう

「寄付金控除」は他の控除に比べると少し堅苦しいイメージがありますが、税制改革によって、より身近で利用しやすい制度となりました。
ふるさと納税や公益団体などへの寄付は、社会貢献だけではなく税制上の優遇を受けることにもつながるので、納税者にとって非常にメリットの高いものといえます。寄付金控除制度を上手に利用して、より一層寄付を身近なものとしていきましょう。