佐藤朋美さんの写真

佐藤朋美(さとうともみ)さん

1984年生まれ、神奈川県横浜市育ち。21歳(大学3年)で初めて精神医療にかかる。現診断名は統合失調感情障害と身体表現性障害。現在は精神障害当事者会ポルケの副代表として当事者活動に勤しみつつ夫と2人暮らし。症状の一つ、身体の痛みに悩まされて以降ストレッチの絶大な効果に仰天し、日々効果的なストレッチ方法をインターネットで探すのが趣味。

私には精神障害があります。

私の場合、無理を重ねると被害妄想や焦燥感、抑うつ症状に襲われ、心も体も余裕がなくなります。心身の緊張状態が続くことで身体がこわばり、ひどい時は痛みが現れます。そして、症状の現れ方に波があるのも精神障害の特徴です。季節や天候の変化、自身の生活環境の変化、はたまた特にきっかけもなく、その波はやってきます。快調に動けていたはずなのに突然不調の波が襲ってきてそれまでできていたことができなくなってしまう――。私はこの波に長い間悩まされていました。私は今までかなりの回数の転職を重ねてきました。すべての勤務が自分の障害をオープンにしない形での、いわゆる“クローズ就労”。同世代の子に追いつきたい、心配をかけてきた親を安心させたい、そんな気持ちがあったからです。

体調の安定した時期は周囲から期待されるのがうれしく、その期待に応えたいという気持ちもあるので頑張りました。しかし徐々に体調不良の前触れを感じ始め、業務をこなすことも精一杯に。上司にうち明けたらどんな扱いをされるか不安で、相談せず無理を重ね…。そしてある日布団から動けなくなり、会社に行けなくなるのです。

急に出社しなくなることで“迷惑”をかけた職場の方々のことを想うと不安ばかりが大きくなります。そのため休職して復帰を目指す選択肢をどうしても持てず退職を選びます。業務のスキルや出会えた人との縁も消え、残るのは申し訳ない気持ちと自己嫌悪。そんな経験を何回も重ねてきました。

しかしこの繰り返しを、今から3年前にようやくやめました。自分なりに精一杯、これだけやっても無理だった。もうそろそろ、荷物を降ろしていいのでは…?

これを機に初めて精神障害者保健福祉手帳の申請をし、2級を取得しました。

今は精神障害当事者会ポルケの副代表として会の運営に携わっています。最後の仕事を退職後、以前からの友人である代表が誘ってくれました。

ポルケでの活動は、精神障害当事者だけが参加するお話会の開催や精神障害の理解啓発を目的としたコンテンツ作成、行政や自治体へ改善を求めたりなど、刺激的で何かの役に立てていることがとても幸せです。

運営に携わり始めた頃、以前から続けていたSNSの自己紹介欄に自分の診断名を記しました。精神障害当事者であることを背負って生きていくという、私なりの小さな誓いでした。

私ができることは皆が生きる日常に、ごく自然に「私自身」が存在することだと思っています。家族や友人、パートナー、地域、職場に当事者がいたら、病だけでその人自身が成り立っているわけではないことがわかるはず。具体的な人物で想像してみると、もう少し精神障害当事者への心の距離も縮まるのではと思うのです。「私」と「精神障害当事者」が結びつくことで、つながりのある方々に何かを感じ取っていただけたら、と思っています。

精神障害当事者が生きやすい世界は、世の中の人々が生きやすい世界にもつながっていると信じています。そして、精神障害を理由としたことで、誰もがあきらめない。そのような世の中が私の理想です。「あきらめない」の主語は障害のある当事者だけではなく周囲の人々、ひいては社会があきらめないことも同じくらい大切です。

活動途中に体調を崩し、運営から一度離れ療養後に復帰したこともあります。それまで体調不良=そのお仕事とさよなら、の経験ばかりの私が、一度離れてもまた戻って来られた、とても大きな出来事でした。波に流されても戻って来られるこの場所を大切に、当事者活動に邁進したいです。

「新ノーマライゼーション」2020年6月号「ひと~マイライフ」より転載