膝をおさえている写真

50代後半から右膝に痛みを感じ、整形外科に通っていました。水を抜いてもらうと楽になる、また痛くなるのを繰り返し、痛み止めや湿布で誤魔化しながら暮らしていました。60歳を過ぎた頃、突然、股関節に痛みが走りました。膝の次は股関節かとショックを隠せないまま、主治医に診てもらいました。診断の結果は変形性股関節症ということでした。膝の痛みは股関節を庇ってのことだった可能性があると言われ、もっと早くに気づいていたら、ここまでひどくならずに済んだのではとの思いに駆られましたが、それを言っても時間を元に戻すことができません。

股関節の治療に関しては温存療法と手術による人工関節置換術があるということでしたが、私の場合は膝の痛みもあり、手術による治療を勧められました。その後、セカンドオピニオンにも診てもらいたく、了承をいただき股関節専門外来を受診しました。医師の見立ては同じでこちらで手術を受けることにしました。

手術の前日に入院、全身麻酔の説明を受けます。手術、麻酔にはリスクもあるので同意書にサインしてとうとう明日になったかと覚悟を決めた瞬間でした。当日はもうまな板の鯉の心境です。行ってきますと妻に手を振りました。目が醒めると個室のベッドの上でした。

驚くことに翌日から歩行訓練がありました。まずはベッドから車椅子に移るのですが、これも自分でどう動くのか、怖くて動けません。ここは無理をせず、看護師さんのお世話になります。車椅子で病室を出てリハビリ室に向かいます。そして、立つ練習です。恐る恐る立ち上がろうとしますが、勇気がいります。立ち上がれたら歩行器に手をかけ一歩を踏み出します。こんなに大変とは思いませんでしたが、周りにも頑張っている同じ手術をした患者さんがいらっしゃったことが励みになりました。

痛みがあっても早くリハビリを始めるほうが良いと説明を受けましたので、それを信じて頑張ることにしました。

一週間経ったあたりから、歩行器を外して松葉杖で廊下を歩きます。脇の下が痛くなるほど体重がかかるのがわかりました。どれだけ今まで歩行器に頼っていたかということです。
松葉杖でも体重をかけ過ぎず歩けるようになってきたら、杖を使います。

片側だけに重心をかけ過ぎないように、心のお守りのような気持ちで杖をつきます。身体の回復が目に見えてわかるのが嬉しくて、杖にも頼っていないと思えるぐらいまで三週間で持ってくることができました。経験豊富な理学療法士の方が、毎日リハビリ指導をしてくださり、安心してお任せできたのが何より良かったです。

私が入院した病院では二週間から四週間ぐらいの入院期間を基準としていて、個人の求めるところまで寄り添っていただける点も良かったです。歩行器から松葉杖歩行に代わり、最後は杖なしで歩けるようになるまで病院でお世話になると決めて、焦ることなく取り組むことができました。

今までの姿勢の悪さも矯正することができ、背筋も伸び、杖歩行ができるようになった時にふと気づいたのが、膝の痛みが消えていることでした。

はじめの病院の医師に膝の痛みは股関節から来ているものかもしれないと言われたことを思い出し、これで膝も楽になるなら、手術を受けることになったのが不幸中の幸いだと思えてきました。

リハビリ室でのリハビリでは同じ手術をした同年代の男性もおられ、お互いの術後の様子もわかっていて、不安な点や回復していくごとの喜びも共感し合え、仲間意識が芽生えたので、退院するのが惜しいような気持ちにもなりましたが、約三週間で杖もいらなくなり、退院を決めました。

実際に自宅に帰っても、特に不安もなく過ごしています。そして、60歳で雇用契約を延長していた仕事への復帰に関しても、今後続く定期検診を最優先するということで了承いただき、継続して仕事に就くことが叶いホッとしております。

今までの趣味であったゴルフもできるということで一安心です。仕事をリタイアしたら、妻と行こうと約束していたヨーロッパ旅行も問題ないと言われ、それを楽しみに筋力もつけていきたいと思っています。空港での金属探知機でのチェックで引っかかるケースがあると報告されているので、人工関節インプラント証明書を発行してもらうのを忘れないでおきたいものです。

人工関節は20年ぐらい持つと言われていますが、現在、61歳なので生涯この関節と仲良く暮らしたく、身体の声に耳を済まし養生しながら生きていきたいと思います。

こうして、回復し自ら普通に動くということが今の私にはリハビリになっていますが、やはり手術をした病院で入院中に寄り添ってくださった医師、看護師、理学療法士、作業療法士の方がいてくださったからこそ、普通の生活に戻ることができました。感謝しかありません。

股関節の痛みを感じておられる方、これから手術に臨まれる方、私の経験がお役に立てば幸いです。