お祖母さんが手すりでリハビリしている写真

理学療法は、リハビリテーションで用いられる手段の一つです。名前は聞いたことがあっても、具体的な内容をイメージするのは難しいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「理学療法とは何か」「どのような疾患の患者に用いられているのか」という基本的な事項から、リハビリテーションの具体的な内容、理学療法が受けられる場所などについて、事例を交えながらご紹介します。

理学療法(リハビリテーション)が必要な疾患

理学療法の対象となるのは、身体を自由に動かせないために日常生活に支障が生じている人や、支障が生じる可能性がある人になります。

身体が自由に動かせなくなる原因にはさまざまなものがあります。骨折やリウマチなどの運動器疾患だけでなく、脳梗塞などの中枢神経疾患や肺炎などの呼吸器疾患、うつ病などの精神疾患によって身体が不自由になっている人も、理学療法の対象に含まれます。

身体の回復過程においては、怪我や疾患・手術の直後である「急性期」、症状が安定する「回復期」、治療が終わって生活に適応していく「維持期」の3段階に分けられますが、理学療法はこれら全ての時期に適用することができる療法です。この他、予防期や終末期に理学療法が適用される場合もあります。

理学療法(リハビリテーション)とは?

理学療法とは、身体機能が低下した状態にある人を対象に、基本的な動作能力の回復などを目的として、運動や電気刺激、温熱やマッサージなどの手段を用いておこなわれる治療を指します。

ここでは理学療法を「運動療法」「温熱療法」「電気刺激療法」の3つに大きく分けて、それぞれの療法の効果や適応される疾患について解説します。

1.運動療法の内容

運動療法では、筋力を増強させる訓練や関節可動域を広げる訓練、ストレッチなどがおこないます。身体機能を向上させ、日常生活での活動をスムーズにしたり、筋肉の緊張をほぐすことで痛みを和らげたりすることが目的です。脳卒中後の麻痺、骨折や腰痛、心疾患、呼吸器の疾患などに広く適応されています。

2.温熱療法の内容

温熱療法は、身体を温めて血行促進をおこなう療法です。「ホットパック」「赤外線」「超音波」「マイクロ波」などさまざまな手段が用いられます。筋肉をほぐすことで痛みを緩和したり、血行を改善したり、代謝を亢進させたりすることが目的で、背部痛や変形性関節症などの疾患に効果的だと言われています。

3.電気刺激療法の内容

低周波・中周波の電気刺激を用いておこなう療法です。痛みを伝える神経の働きを抑えて痛みを緩和したり、運動神経に働きかけて筋収縮を促したり、組織の修復を促進させたりすることができます。筋力低下や麻痺などの運動障害だけでなく、嚥下機能や排尿機能の改善にも用いられます。

理学療法(リハビリテーション)を受けられる場所や施設

総合病院の外観写真

理学療法は医師の指示のもとに理学療法士などが実施する医療行為であり、誰でもおこなえるわけではありません。したがって、理学療法が受けられる場所はある程度限られています。ここでは、理学療法が実施される主な場所を3つご紹介します。

医療機関

総合病院や一般病院、診療所などの医療機関で、医学療法が提供されています。医療機関では、チーム医療の体制が整っているというメリットがあります。また、リハビリテーションの最中に万が一のトラブルが発生しても、医療体制が整っているのですぐに治療を受けることができるので安心です。

老人保健施設

「介護老人保健施設」でも、理学療法によるリハビリテーションを受けることができます。「介護老人保健施設」は自宅復帰を目的とした施設ですので、機能回復の訓練が主なサービスとなっており、リハビリテーション専門職員が必ず1名以上配置されています。

訪問リハビリテーション

リハビリテーション専門職員が患者の自宅を訪れて理学療法をおこなうこともあります。ただしこれが可能になるのは、主治医から訪問リハビリテーションの必要性があると判断された場合のみです。

理学療法(リハビリテーション)の事例

・20代女性/顎関節症で理学療法を受けた事例

かねてから食事の際などに口を開けるたび音が鳴り、顎に違和感があったのですが、ある日、ほとんど口を開けられなくなってしまい、仕方なく病院に向かいました。医師から「顎関節症」の診断を受け、その日から理学療法を用いたリハビリテーションをおこなうことになりました。

温熱療法、電気刺激療法、運動療法を併用してリハビリテーションを進めていきました。まずは専用の機器で患部を温め、そのあと低周波機器で顎に微弱な電流を流し、筋肉をほぐしました。それが終わったら、理学療法士の指導を受けながら、顎の関節を動かすエクササイズをおこないます。顎を大きく動かすとかなり痛むため、少し痛みを感じる程度まで、恐る恐る口を開けていきます。

これらのトレーニングを重ねていくうちに、だんだん大きく口を開けられるようになり、気がつくと痛みを感じることなく自然に口が開くようになっていました。現在もリハビリテーションをおこなっていますが、今では食事もおいしく摂れるようになり、ほっとしています。

まとめ

理学療法は、身体を自由に動かせないために日常生活に支障が出ている人や、支障が出る可能性がある人を対象に、基本的な身体機能の回復を主な目的としておこなわれる治療のことです。症状に合わせて、「運動療法」「温熱療法」「電気刺激療法」などのさまざまな手法が用いられます。

理学療法によるリハビリテーションは医療機関や老人保健施設で実施されている他、訪問リハビリテーションにも取り入れられることがあります。怪我や疾患などの理由で身体が動かせなくなったら、理学療法の力を借りて日常生活への復帰を目指しましょう。