棒グラフの資料と電卓と1万円札の写真

企業の収支を分類する際に重要な役割を果たす勘定科目ですが、発生頻度の低い科目はどのように仕訳すべきか悩むことも少なくないでしょう。特に寄付金は、交際費や宣伝広告費などと内容が似通っている一方で、区別を誤ると税金の金額も変わってくることから正しく理解しておく必要があります。
ここでは、寄付金と混同しやすい交際費の違いのほか、身近な仕訳例を具体的にあげて解説します。

寄付金における定義とは

ではまず、寄付金の定義と交際費との違いについて解説します。

寄付金とは

寄付金とは、お金やもののほか経済的な利益を贈与あるいは無償で供与することです。一般的には、寄附金・拠出金・見舞金などが該当します。寄付金は事業との直接的な関連が明確でないため、損金の算入には一定の制限が設けられています。

寄付金と交際費の違い

交際費とは、事業に関係のある者に対して接待・供応・慰安・贈答などのために支出する費用のことです。寄付金も交際費も金品・物品・経済的利益などが供与されるため、どちらで会計処理すべきか判断に困ることもあると思いますが、ポイントは相手先との関係性と反対給付の有無です。
寄付金は事業と直接関連がない相手に対して反対給付を期待せずにおこなうものです。交際費は事業と関係のある相手に対して発注や取引の維持など何らかの反対給付を期待しておこなうものです。
区分を間違えると税金額も変わってくるので、両者の区分は間違えないよう注意が必要です。

寄付金は3種類に分類できる

男性がピンクの豚の貯金箱を持って硬貨を入れている写真

寄付金は、法人特有の勘定科目です。 個人事業主が寄付をした場合は、確定申告時に寄付金控除として処理をします。 ここでは、法人における寄付金の分類について説明します。

指定寄付金等

寄付金が最終的に国などに帰属し、納税がおこなわれた場合と同様の効果が得られる寄付金です。指定寄付金等は、全額が損金に算入されます。
指定寄付金等の例としては、国や地方公共団体に対する寄付・国公立学校の建設費用としておこなわれた寄付・日本赤十字社などに対する寄付で災害義援金に該当するもの・中央共同募金会への寄付などがあります。

特定公益増進法人に対する寄付金

特定公益増進法人とは、教育や科学の振興・文化の向上・社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与する法人のことです。これらの法人への寄付は公益性が高いため、一般の寄付金とは別枠で計算される特別損金算入限度額の上限金額まで損金算入されます。また、限度額を超えた金額についても、「その他の寄付金」として算入されます。
特定公益増進法人に対する寄付金の例としては、自動車安全運転センターに対する寄付・日本オリンピック委員会に対する寄付・日本赤十字社に対する寄付で事業費にあてられるもの・認定NPO法人に対する寄付などがあります。

その他の寄付金

損金性が低い寄付金が該当します。特定公益増進法人に対する寄付金のうち、特別損金に算入されなかった金額と合算して、損金算入限度額に達するまでの金額が損金算入されます。
その他の寄付金の例としては、政治団体に対する寄付・町内会のお祭りや祭礼に対する寄付・神社仏閣宗教法人などに対する寄付・日本商工会議所に対する寄付などが該当します。
なお、お祭りや祭礼などに協賛金名目で支出しても、提灯などに企業名が表示されたり、協賛企業としてアナウンスされたりするなどPR効果が認められる場合には、「寄付金」ではなく「広告宣伝費」とする方がふさわしいケースもあります。

パターンごとの仕訳例について

ここからは代表的な寄付のうち、身近なものを例として仕訳方法を解説します。

共同募金の仕訳方法

赤い羽根などの共同募金は、指定寄付金等に該当します。
赤い羽根共同募金に現金で10万円の寄付をおこなった場合、「借方科目/金額」は「寄付金/10万円」となり、「貸方科目/金額」は「現金/10万円」となります。

義援金の仕訳方法

義援金もまた、指定寄付金等に該当します。
日本赤十字社の口座に25万円の義援金を送った場合、「借方科目/金額」は「寄付金/25万円」となり、「貸方科目/金額」は「普通預金/25万円」となります。

政治献金の仕訳方法

政治献金は、その他の寄付金に該当します。なお、営利法人は、政治資金規正法により政治活動への寄付が制限されており、政党やその政治資金団体にしか寄付できません。
政治資金団体に100万円の寄付をした場合、「借方科目/金額」は「寄付金/100万円」となり、「貸方科目/金額」は「現金/100万円」となります。

勘定科目と仕訳を理解し正しく計上しましょう

経理・会計を担当する方や個人事業主の方は、事業における取引で発生する収益や費用を勘定科目で仕訳しなければなりません。特に寄付金については、交際費など他の科目と混同しやすいことから、その内容をしっかり理解しておかなければ誤った科目で分類してしまう恐れがあります。
寄付金の発生は頻繁にあるものではありませんが、分類を間違えると後日税金を追加で支払わなくてはならない場合もあります。勘定科目と仕訳をきちんと理解し、正しく計上するようにしましょう。